2025年1月28日(火) 【男性不妊】
精子の質が低下する精索静脈瘤とは?
精索静脈瘤とは
精索とは、精巣の動脈、静脈、リンパ管と精管がまとまっている筒状の部分を言い、この管内の静脈が何らかの原因によって血液が逆流してしまい、精巣の静脈血管が瘤状に腫れてしまっている状態を言う。
80〜90%は左側に多く思春期以降によくみられるのだが、小児にもみられ男性不妊症の原因になることがある。
原因
静脈は全身を巡りきった血液が心臓に戻っていく血管のため、内部の圧は低くもともと血液の逆流を起こしやすい。そのため、静脈内には逆流防止弁があり、逆流を防いでいる。しかし、その弁が機能しなくなることによって、血液が逆流し精索静脈瘤ができると考えられている。
精索静脈瘤は、陰嚢内の温度が上昇してしまうため、精巣の発育不全・精子の形成不全などを引き起こし、不妊症の原因に繋がってしまうことが多い。
症状・診断・検査
・陰嚢や鼠径部(そけいぶ)に痛みや違和感がある
・陰嚢のふくらみ方や大きさが左右で違う
・精巣が引き下げられるような痛み など
精索静脈瘤の診断は、陰嚢の外観から診断が可能だ。特徴として、腫れている静脈瘤を認めることで診断が可能だ。腫れは、臥位で小さくなり、立位で腫れが大きくなる。
また、数分間立った状態で腹圧をかけると、腫瘤がはっきり分かる。アイソトープを利用した診断法もあるようだが、主に触診と超音波検査で十分診断可能なようだ。
治療
治療は外科手術になる。成人で痛みが強い場合や、男性不妊症の原因と思われる場合には手術の適応となる。思春期でも精巣の大きさに差が出ている場合にも、将来の不妊予防を考慮して手術の適応と考えられている。
血液が逆流しないようにするために、2種類の方法がある。
・静脈につめ物をして血液の流れを止める方法
手術は静脈をしばる部位により大きく二分される。
・精索静脈低位結紮術:足の付け根のところ(そ径部)でしばる
精索静脈低位結紮術では精巣に近いため細い血管がたくさんあり、顕微鏡を使用しなければならない。
手術側は非常に大変な作業だが、静脈のしばり残しが少ない・治療効果が高い・合併症も少ない・患者の負担も軽い、というメリットがあるようだ。
男性不妊症
精索静脈瘤があると精巣の温度が2〜3度上昇することが多く、熱に弱い精巣の造精機能が低下して、男性不妊になってしまうケースもある。さらに、精索静脈瘤がある男性の精子のDNAは壊れている確率が高い。
一般男性では約10%、男性不妊の方では25〜40%で精索静脈瘤が見つかっている。潜在的に多くの患者がかなり多い。
しかし、現在の不妊治療はどうしても女性が主体になっているため、男性については精子だけが注目され、診察もされることが少ない。そのため、精索静脈瘤を発見される確率は低い。
自分で簡単にチェックするには
立った状態でお腹に力を入れてみる。
精巣(睾丸)の上のほうに何か触れた場合や仰向けに寝てお腹の力を楽にした際に、その違和感が小さくなったり、柔らかくなったりした時は、精索静脈瘤の可能性がある。
精子の質を上げるために
精子が少ないということの事実をどのように受け止め、男性側の身体と健康の改善を図ることは妊娠の前に必要な事だ。
熱を避ける
熱に弱い精子を守るため、膝の上にノートパソコンを置いて仕事をしたり、熱がこもりやすいブリーフを穿いたりするのをやめよう。
喫煙・飲酒を避ける
喫煙やアルコールも精子の状態に影響するので、妊娠が成功するまでは控えたほうが無難である。
ミトコンドリアの活性化
いろいろな方法が考えられるが、ミトコンドリアのに注目してみよう。ミトコンドリアは精巣機能を活性化させる力を持っている。
しかし、不規則な生活が続いたり、過剰にストレスがたまっていたりすると徐々に数が失われ、元気の良い精子を作るだけのエネルギーが出せなくなってしまう。
ミトコンドリアは、早寝早起き・栄養バランスのとれた食事・適度な運動によって活性化される。筋肉の中に多く存在するので、トレーニングをすると良いだろう。