2017年1月23日(月)  卵子対策

ミトコンドリア活性で最強の”若返り薬”への可能性が開かれる

老化 ミトコンドリア


誰にとっても時間は平等に過ぎていく。どれほどのお金や権力を以ってしても、過ぎ去ってしまった時間を取り戻すことはできない。

体は歳を重ねるごとに衰え、病気にかかりやすくなり、残された時間は刻一刻と……という、あらゆる生命が背負ってきた宿命が、どうやら変化する可能性もありそうな発見だ。

12月19日に「New Scientist」が掲載した記事によると、科学者のチームが、ある方法によって、歳をとったネズミの老化を食い止め、さらに若返らせることにまで成功したというのだ。

そもそも、なぜ老化するのか?

哺乳類の老化は、細胞の中にあるミトコンドリアと深いつながりがあると考えられてきた。

ミトコンドリアとは、それ自身が独自のDNAを持ち、呼吸を行うことで細胞にエネルギーを供給する役割を担っているもの。

しかし、哺乳類が歳を重ねるうちに、ミトコンドリアの機能は衰え、その結果としてアルツハイマー病や糖尿病にかかりやすくなるといわれているのだが、ハーバード大学医学大学院のアナ・ゴメス氏のチームによって、その謎の解明が明らかになる日が近づいたようだ。

老化の原因1=ミトコンドリアの衰え

まず、ゴメス氏のチームは、生後6カ月の若いネズミと22ヵ月の年老いたネズミの骨格筋の細胞内において、遺伝子情報を運んでいる「メッセンジャーRNA」の値を比較した。

その結果、若いマウスと年老いたネズミでは、細胞核における「メッセンジャーRNA」の値にはそれほど差がないことが判明する。
ところが、それとは対照的に、ミトコンドリアにおける「メッセンジャーRNA」の値は、歳ととともに衰えていた。
この時点で、ミトコンドリアの衰えこそが老化の原因であることが確認された。

老化の原因2=「SIRT1」の不足

 

次に、このように対照的な値の変化を見せる物質が、もう一組発見される。
長寿に強く関わっているとされ、細胞内で、核とミトコンドリア間の連携を促す仲介者的な役割の「SIRT1」というタンパク質と、「HIF-1α(低酸素誘導因子)」というタンパク質だ。

「SIRT1」が不足している年老いたネズミでは、逆に「HIF-1α」が高い値を示すのだというが、「HIF-1α」の増加は、細胞の構成分子の連携(核とミトコンドリアなど)に大混乱をもたらすのだという。
以上の結果は、細胞核とミトコンドリアとの間の連携は、「HIF-1α」と「SIRT1」という2種類のタンパク質の量に左右されているという事実を示している。

細胞内の「SIRT1」の値が高く、核とミトコンドリア間の連携が良好になされる限り、老化は抑えられるそうだ。

老化の原因3=「NAD+」の不足

しかし話はより複雑で、その「SIRT1」というタンパク質に仕事をさせている存在があり、それこそが「NAD+」と呼ばれる分子であるという。

「NAD+」が不十分だと、「SIRT1」は「HIF-1α」を監視する能力を失ってしまうそうだ。
つまり、哺乳類の老化にとって決定的に重要なのは、「NAD+」の量であり、その減少こそが、年齢による衰えの原因であるということだ。

ゴメス氏のチームはこれらを実証するため、22ヵ月の年老いたネズミに、1日に2回ずつ1週間にわたって、「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」と呼ばれる「NAD+」の値を上げるための分子を投与し続けた。

実験結果

すると、1週間が過ぎようとするころには、22ヵ月のネズミの筋肉の萎縮量と炎症の値は下がり、さらには、6ヵ月の若いネズミにも似た、異なる筋肉の型が発達してきていたのだという。

「私たちが行った実験は、ネズミのミトコンドリアの機能を向上させ、老化症状を改善したものと考えます。つまり、これは若返りの方法を見つけたということに他なりません」とゴメス氏は語る。

また、ゴメス氏のチームのある研究者による、「老化のプロセスとは、夫婦のようにも見えます。若いときはよくコミュニケーションをとる。しかし歳を重ねるごとにコミュニケーションは減退していく。そしてコミュニケーションの復活こそが老化を止める鍵だったのです」という言葉も印象的だ。

ミズーリ州セントルイスのワシントン大学において老化の研究に携わってきた今井眞一郎准教授も、この研究についてのコメントを求められ、「『NAD+』が不足すると、著しく老化します。この問題を改善するためには、『NMN』のような物質を用いて、『NAD+』を増加させることが鍵なのです」と語っているようだ。

今後この研究がさらに進展し、私たちの寿命が飛躍的に延びるような時代が来るかもしれない。

しかし、「長く生きること」と、「良く生きること」は次元の異なる問題だ。
たとえ人生の残り時間は増えても、一瞬一瞬を無駄にすることなく生きたいものだ。

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